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ストーリーズ

生産者紹介vol.1 「土地の恵みを存分に生かした、美味しいチーズを造りたい」-チーズ『ガロ』山田農場さん-

更新日:2023年5月18日

今回僕が話を聞いたのは、北海道七飯町でチーズ工房を営む山田圭介さん、あゆみさんご夫婦。山田さんご夫婦は現在やぎなどの動物を育てながら、そのやぎのミルクで「ガロ」というチーズを作られています。何もなかった山を開拓し、「そこにあるもの」で作られたチーズの中には、山田さんご夫婦の優しく、強い信念がこもっていました。




東京都で生まれ育った山田あゆみさん。

小さい頃から動物が好きで、動物と関わりたいという思いで日本獣医畜産大学(当時)に入学します。

大学では広大な土地への憧れから、3年生の時に別海町を研修で訪れました。

それを機に北海道への思いが強くなり、大学卒業後、北海道興部町の牧場に就職し、スイスでの研修を経て、共働学舎新得農場で働くようになりました。

その時のあゆみさんの理想は、放牧草の他に、地元で採れる牧草や米、大豆などの「輸入穀物を与えない」食事で動物を育て、その土地に自生している菌でチーズを作る、当時の産業的な農業の流れとは違った、そんな農業が理想でした。





一方、愛知県で生まれ育った山田圭介さん。

幼少期から自然の近くで育ち、やぎのミルクとの関わりも多くありました。

そんな圭介さん、中学校を卒業すると島根県の全寮制の高校に入学し、そこでの経験をきっかけに、チーズ作りに興味を持ちます。

そしてそのままチーズを作っている農場に就職。

その農場が、共働学舎新得農場でした。






共働学舎で出会った二人は農業の理想像が近かったこともあり、一緒にチーズを作ることのできる土地を探し始めます。

圭介さんが道南に惚れ込んだことから探す土地の条件は、

⒈地元で食べてもらうことで作られる食文化のひとつにするために、函館から1時間圏内

⒉放牧ができて植生が豊かなところ

⒊2~3haの南向きの斜面が住宅の近くにあるところ

の3つでした。

しかし条件にあった土地はなかなか見つからず、土地探しは難航します。

あゆみさんはすでに第一子を妊娠しており、新得と函館を往復して土地を探す日々にも限界が来ていました。

そこで助けてくれたのが、ある地元の方でした。

その方が小さな家を貸してくれたおかげで第一子を無事に出産することができ、その後圭介さんが条件にあった山を見つけ、地主の方との話し合いの末、ついに土地を借りることができたそうです。

しかしその時は電気、水道、道すらない、本当にただの山でした。

圭介さんとあゆみさんは何もなかった山にまず道を作り、次に水道を引き、電気が通るまでは手のことハンマーとチェーンソーで畜舎と自宅を作りました。

夏の暑い時期も、冬の寒い時期も、農場は1から全て手作りです。






こうして山田さんは、何もなかった山から農場を作り上げたのでした。

さらに2008年、飼っていた子牛とやぎたちと共に、念願のチーズ工房をオープンします。

チーズは「牛乳」だけでなく、やぎ、水牛、羊などのミルクからも、様々な土地で様々なチーズが作られています。

山田さんは当初やぎと牛を飼っていましたが、発情期や土地に見合った育て方を鑑みて、やぎのみに切り替えます。

しかしホルスタイン牛が1日に40ℓ以上のミルクを出すのに対し、やぎのミルクは1日わずか2~3ℓの乳量と言われています。

さらにチーズの味は土地の気候や風土、食べているものによって大きく左右されるので、季節によってそれに合わせたチーズの作り方を考えなくてはいけません。

山田さんが農場を作った地域は昔から「ガロ」と呼ばれており、『土地の味を反映したチーズ』という意味合いを込め、チーズには「ガロ」という名前をつけました。

ガロの一番の特徴は、無殺菌乳で作っているということです。

ミルクの殺菌をしてからチーズを作るのが常識というチーズ業界で、保健所と幾度となく検査と相談を繰り返し、自然にこだわった育て方だからこそできる無殺菌乳チーズを作り上げました。

「食べやすいものではなく、美味しいものをつくりたい」

そんな山田さんの思いに応えるかのように、お客さんからは毎年「去年よりも美味しい」という言葉が返ってきます。

今、ここにあるものでつくり、毎年変化し続けるおいしいチーズ。

そのままはちみつと食べるのが、山田さんオススメの食べ方だそうです。

ぜひ、皆さんもご賞味ください。




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